
密集する低层住宅の上空をロープウェイが移动する。再开発によって多くの住宅を破壊することなく,住民が必要とする移动手段を提供した
ベネズエラの首都カラカスは,周囲を小高い丘に囲まれた都市である。丘にはびっしりと低层住宅が张り付いている。その上空をロープウェイが滑らかに移动する。市街地の中心部にある地下鉄の中央公园駅から出発。丘の稜线に沿って住宅密集地内に设けられた3つの駅を経由し,别の地下鉄の駅までつないでいる。
ロープウェイの総延长は2.1办尘。ゴンドラは8人まで乗れるサイズであり,1时间に1,200人を输送する能力を备えている。住宅密集地の隙间に建てられた駅は,いずれもスチールの屋根とコンクリートのスラブを持ち,同じ素材と工法で构成されている。
利用者の期待を集めるのは駅に付随した施设だ。駅に寄り添って建设が进む5层の建筑物には,ミュージックスクール,ダンススクール,図书馆などの文化施设や,バスケットコート,プール,ランニングコースといったスポーツ施设が入る予定だ。駅によってはデイケアセンター,スーパーマーケット,コミュニティセンターなどが入る施设も计画されている。
各駅にはそれぞれ违った施设が入るため,利用者はロープウェイを使って必要な施设までアクセスする。运赁は市営バスの4分の1。住民が気軽に利用できる金额である。
ロープウェイの计画と駅の设计を担当したのは,建筑设计事务所アーバンシンクタンクを主宰するアルフレド?ブライレンブルグとフバート?クランプナー。ゴンドラはオーストリアの公司,駅のグラフィックはパリのデザイン事务所がそれぞれ担当した。

都市周辺の丘の地形に沿って建てられた低层住宅。中央の尾根筋上にロープウェイが通っているのが见える
photo by Iwan Baan
ベネズエラは1970年代と1980年代に急速な経済発展を遂げた。その结果,首都カラカスには多くの人口が流入することになった。中心市街地には高层ビルが立ち并ぶが,それを囲む丘には低层住宅が密集して张り付く。その地域では,贫困,インフラの未整备,公共空间の欠如など,世界中の同じような地区と共通の课题を抱えている。これまでであれば,新しい街へとつくり変える方法が议论されただろう。しかし最近はそれほど単纯な话にはならない。スラムの良さが见直されつつあるからだ。
アーバンシンクタンクのふたりは,もともとカラカス市内の别の设计事务所で働いていた。スラム问题に取り组みたいと思っていたふたりは,仕事とは别に研究チームをつくって现地でフィールドワークを入念に行った。さらに,地域コミュニティとともに何度もワークショップを実施した。その结果,曲がりくねった街路には通过交通が発生しないため安全であること,街路や阶段を歩くことによって人が出会い,会话が発生しやすいこと,自分たちがつくりあげてきた住宅や街路に爱着があることなどの魅力が整理できた。一方,急病人が出た场合,市街地の病院までたどり着くのに时间がかかること,市街地へ行くまでにバス停までの长い距离を歩くうえに,バスを2回乗り継がなければ出られないこと,その运赁が高すぎることなどの课题が明确になった。

ロープウェイは高层ビルが立ち并ぶ都市部と低层住宅が密集する丘の顶上を结ぶ。顶上の駅は住宅に接して建てられているが,ロープウェイは静かに移动するため騒音问题は発生していない
フィールドワークとワークショップを重ね,ふたりはこの地域にロープウェイを通す计画を提案した。その理由は,①急峻な地形であること②既存のまちに対する最小限の介入で済むこと③高い持続可能性と可変性を兼ね备えていることの3点。ふたりは言う。「彼らは计画やデザインを実现するための费用を持ち合わせていません。だからまず僕たちは无偿で计画书をつくって彼らにプレゼントしたのです」。そして,ふたりは実现に必要な支援者を集めるために,住民とともにフォーラムを行ったりポスターをつくった。「その结果,研究所や政治家が応援してくれることになり,最终的にはチャベス大统领がこの计画の実行を后押ししてくれたのです」。そして彼らは独立して,研究会の名称を引き継いだ设计事务所を设立したのである。
アーバンシンクタンクのふたりが尊敬する人物のひとりに,パレスチナの建筑家モシェ?サフディがいる。1960年代に彼が书いた『クルマ社会の后に我々は何をすべきか』という本にはかなり影响されているという。「地域コミュニティの人たちは基本的に歩行者です。歩きながらさまざまな人と出会う。会话が生まれる。だからそれを壊したくない。クルマ社会になれば个别に移动し始めます。僕たちは単に交通ネットワークをつくりたいだけでなく,社会的なネットワークも维持したいと考えている。社会资本整备だけでなく,社会関係资本(ソーシャルキャピタル)も醸成したいんだ」

まっすぐ移动するロープウェイに対して,地上の道路は蛇行している。ロープウェイの駅にはバス停があり,蛇行した道路を走るバスに乗り换えることができる
駅に付随した文化系プログラムやスポーツ系プログラムは,住民たちが集まるきっかけをつくりだすだろう。ロープウェイは午前6时から午后10时まで运行しており,市街地へのアクセスが向上したことによって新たな职を得た住民もいる。上空からの视点を意识して,住宅の屋根を葺き替えたり壁の色を涂りなおしたりする人もいる。こうしたスラムの着実な変化を见下ろしながら,ロープウェイは今日も彼らの头上を静かに移动している。

La Ceibita駅で建設中のスポーツ施設。ほかにも政府が出資したスーパーマーケット,デイケアセンターなどが入る予定

付帯施设の计画。すべての駅は同じ素材と工法を用いており,プログラムの违いによって空间が入れ替わる。駅にはスポーツ施设や文化施设が併设され,コミュニティ活动の中心となるよう计画されている
山崎 亮 やまざき?りょう
ランドスケープ?デザイナー。蝉迟耻诲颈辞-尝代表。京都造形芸术大学教授。1973年生まれ。
Architecture for Humanity Tokyo / Kyoto設立準備会に参画し,復興のデザインの研究を行う。
着书に『コミュニティデザイン』(学芸出版社),『震灾のためにデザインは何が可能か』(狈罢罢出版)など。
Architecture for Humanityはサンフランシスコを拠点に世界各地で復興や自立支援の建設活動を主導する非営利団体。
参考资料
- 展覧会図録『Small scale Big change』(MoMA)「Small scale Big change」展ウェブサイト:
- Urban-Think Tankウェブサイト :
(写真提供:特記なきかぎり ©Urban-Think Tank)



