
サハラ砂漠をラクダで移动する。砂丘は风によって地形が変わり道路は存在しない
モロッコの多様な地势
古来,人间の生活と动物は切り离せないものだった。马や牛は农耕,牧畜には欠かせない生き物であり,产业革命によってモビリティの主役の座を机械に譲るまで,马车や牛车といったのりものの动力にもなって人々の営みを支えてきた。
その过程で道路も,人间や动物の足で固められた踏み分け道から,石畳を経て,アスファルトやコンクリートの舗装道路に姿を変えていく。欧米や日本をはじめとする先进国では,アスファルトの上を自动车が走る光景が一般的になっている。

しかし世界を见渡せば,现在もロバやラクダといった动物たちがモビリティの一翼を担っている场所が存在する。モロッコもそのひとつだ。
モロッコはアフリカ大陆の北西部に位置しており,国土の北端はジブラルタル海峡に接し,东侧は地中海,西侧は大西洋に面している。首都ラバトや,映画の舞台になったカサブランカ,旧市街がユネスコの世界遗产に登録されているマラケシュ,フェズなどの大都市は,国土の西侧に集中している。一方で内陆には,モロッコの最高峰ツブカル山(4167尘)を拥するアトラス山脉が横たわり,その奥には世界最大のサハラ砂漠が広がる。
このように多様な地势を夸るモロッコを,海沿いから内陆に进んでいくと,同じ国とは思えないほどの景色の変化に惊かされる。今回はラバトとともに北部の核となっている都市フェズから山を越え,砂漠地帯に至るルートを辿った。
「迷宫」都市からアトラス山脉へ
モロッコ有数の大都市フェズは1200年以上の歴史を持ち,この国で最初に首都が置かれたことでも知られる。笔者が最初に访れたのは城壁に囲まれた旧市街のフェズ?エル?バリ。8ヵ所ある门から街に足を踏み入れると,「迷宫」という别称のとおり,毛细血管のように细く入り组んだ道が张り巡らされている。初めて访れた人は,现地ガイドなしでは迷子になってしまうだろう。
城壁の内侧にはこの地でなめした革を用いた靴や鞄をはじめ,民族衣装から野菜といった食料品まで,さまざまな物が売られる「スーク(市场)」がある。多くの道は幅1~2尘程度。そこに住民と観光客と店员が入り混じり,客引きの声が壁に响く。カオスという言叶を思い出す。

フェズの「スーク」

旧市街の皮革用品店と阶段状の街路
ここでのモビリティは馬やロバだ。道が狭いことに加え,路面は土のままという場所もあり,階段さえ存在しているからだろう。最初は驚いたが,环境に見合った選択であることもまた事実だ。
もっともこの光景を体験できるのは古き街并みを维持すべく保全の手が入っているためでもある。门を出ればアスファルトで舗装された道路を自动车が走る,日本でもお驯染みのシーンを目にすることができる。
しかしそれも束の间,都市部を出ると家并みが途切れ,乾燥した地肌に树木が点在する眺めに移り変わっていく。荒れ気味の舗装路は次第に登り坂になり,山越えに向かっていることを伝える。
アトラス山脉は日本の山脉より缓やかで,裾野が高原のように広がっている。フェズもこの裾野にあり,街の标高は约500尘だ。しかし山脉を越えるには,2000尘级まで登らなければならない。

「スーク」の一角で休憩中のロバ。ここでは歴としたモビリティ

フェズ郊外のアスファルトで舗装された干线道路

フェズ旧市街,「迷宫」を望む
砂漠に生きる心强い“のりもの”たち
フェズから3时间ほど走ってきた干线道路に别れを告げ,そのまま自动车で地方道を山越えに挑んでいくと,景色が一気に変わる。坂はかなり急になり,道には砂利さえ敷かれておらず,ところどころ岩が露出している。标识や案内の类もなく,旅行者は现地ガイドに従うしかない。

山越えの道。道しるべになるものはなく頼りは现地ガイドとわだちだけ
山を越えると再び景色が変わる。今度は砾(れき)砂漠だ。惊いたのは,山脉のさらに奥にある砂漠地帯にも人が住んでいることである。クルマを止めると周囲に子どもたちが駆け寄ってきた。自动车はもちろん,よそものと会うこと自体がめずらしいのだろう。
この砂漠をさらに南へと进むと,砂の粒が细かくなり,砂丘になる。ここで移动手段は自动车からラクダに切り替わる。砂丘はご存じのように,风によって地形が変わるので道路は存在しないし,自动车のタイヤはすぐに砂のなかに埋まってしまい,身动きが取れなくなることも多いからだ。

砂漠に住む子どもたち
途中で数十头のラクダを引き连れた游牧民とすれ违った。体験のためにラクダに乗る私たち観光客とは対照的に,彼らは肉や乳を饮食し,自分たちの移动や物を运ぶのにもラクダを利用している。
モロッコの人々は多彩な环境に適したモビリティを選択していた。それがフェズやサハラ砂漠といった土地ごとの個性を明確にしている。のりものは風景に欠かせない名脇役であることを思い知らされた。

休憩中のラクダの群れ

今回はフェズから干线道路を下り,地方道で山越え,サハラ砂漠まで道なき道を辿った
森口将之(もりぐち?まさゆき)
モビリティ?ジャーナリスト,モーター?ジャーナリスト。1962年東京都出身。早稲田大学卒業後,1993年まで自動車雑誌編集部に勤務。フランス車を専門としていたが,パリ市が环境政策を打ち出したのをきっかけに,2000年前後から交通,环境,地域社会,デザインを中心に評論活動を展開。現在は世界の各都市をめぐりながら,公共交通のかたちについて取材に取り組んでいる。著書に『パリ流 环境社会への挑戦』(小欧视频出版会,2009年)など。




