
サパーンタクシン駅最寄りの船着场からチャオプラヤー川右岸を望む
渋滞都市からの脱却
水の都と呼ばれる都市は国内外にいくつもあるが,アジアで言えば,タイの首都バンコクがそのひとつだろう。タイランド湾に注ぐチャオプラヤー川沿いに,川を干として细い运河が枝のように市内の各所に伸び都市が発展していった。运河は现在でも移动や物流に活用されている。
しかし20世纪后半になると,バンコクの输送手段の主役は陆上交通になり,それにあわせて道路が次々に整备された。政府は道路を川や运河のように考えたそうで,タノンと呼ばれる干线道路から住宅地に向けて,ソイという细い道を树枝のようにつくっていった。そこから住民が自宅までさらに细いソイを延ばしていった。

よって多くのソイは行き止まりであり,自动车がタノンに集中することになった。都市高速や立体交差の建设も遅れ,その结果,世界で5本の指に入るという交通渋滞で有名な都市になってしまった。

バンコク最大の繁华街サイアム駅近くを走る叠罢厂シーロム线。地上の渋滞にしばられない叠罢厂スカイトレインはビジネスパーソンの味方
この悪评を克服すべく,1999年に开业したのがバンコク初の都市鉄道叠罢厂(バンコク?マス?トランジット?システム)である。
叠罢厂はスカイトレインという爱称で,その名のとおり全线高架の鉄道だ。地上に线路を敷く余裕がなかったせいもあるが,川沿いの低地に発展したバンコクはしばしば洪水に悩まされるため,その影响を受けない构造にしたという理由もある。
叠罢厂にはバンコク北部と东部を结ぶスクンビット线と,中心部から南西へ向かうシーロム线がある。両者が连络するサイアム駅周辺はバンコク最大の繁华街だ。高级ホテルやショッピングセンターが入る高层ビルが立ち并び,その间を缝うように叠罢厂の高架线が分岐していく光景は,1,500万人超もの都市圏人口を抱えるメガシティの中心であることを実感させる。行き交う人々のファッションも洗练されており,日本の大都市と変わらない。
サイアム駅のホームは上下2层になっており,同方向に向かう列车に対面乗り换えできる。ホームから目を下に転じると道路は自动车でぎっしり埋まっており,ほとんど动いていない。対する叠罢厂はもちろん渋滞とは无縁。定时に迅速に运行する便利さもあって,时间を问わず混んでいた。
カオスの眺め
スクンビット线に乗って北へ向かい,アヌサーワリーチャイサモーラプーム駅で降りる。駅前には第2次世界大戦中にタイがフランス领インドシナとの纷争で胜利したことを记念した巨大な塔がある。塔を囲むロータリーには,バスターミナルと庶民的なショッピングアーケードが连なる。厳かだが活気あふれる风景だ。
バスターミナルからは赤や青,オレンジ,黄などを基调に涂られたにぎやかな车体のバスがひっきりなしに到着しては,客を乗せ発车していく。バスに负けず,ピンクや緑と黄のツートンカラーといった鲜やかな色彩をまとっているタクシーの姿も目立つ。そこにバンコク名物の叁轮タクシーのトゥクトゥク,自家用车,トラック,バイクなどが混じり,カオスと呼びたくなる光景が繰り広げられている。

バンコクの交通机関が一挙に集まる戦胜记念塔を囲むロータリー。叠罢厂スクンビット线の高架下にもバス停が并ぶ

ターミナルを発车した路线バス

戦胜记念塔広场のロータリーに列をなすタクシー。バスに引けを取らない色鲜やかな车体
再び叠罢厂に乗って终点のモーチット駅に向かい,今度は地下鉄に乗り换える。バンコクの地下鉄は惭搁罢(マス?ラピッド?トランジット)と呼ばれており,さらなる渋滞解消を目的として日本の翱顿础などで建设された。まずブルーラインが2004年に开业。続いてパープルラインが2016年に走り始めた。
今回乗ったブルーラインはバンコク中心部をコの字型に囲むように走る。ホームドアを备えた近代的な駅のつくりは,日本の地下鉄でもおなじみの光景だ。景色は楽しめないが,スピーディに都市内を移动できることから,こちらもホームは大混雑,座席が常に埋まるほどの乗车率だった。
バンコク随一のオフィス街の中心シーロム駅で降りて地上に出る。人々の憩いの场でもある大きなルンピニー公园が目の前に広がる。公园手前の交差点の陆桥を见ると,タイと日本の国旗が掲げられていた。わが国では「日タイ桥」と呼ばれるこの陆桥は,1992年に日本の资金援助で架けられた。近くには「タイ?ベルギー桥」もある。外国からの援助を受けながら,渋滞解消のための道路整备を急ピッチで进めてきたのがわかる。
日タイ桥の上を交差して走る叠罢厂シーロム线に乗り,隣駅チョンノンシーへ。ここからはバンコクで唯一の叠搁罢(バス高速输送システム)が出ている。オフィス街を走る大通りの中央を流れる细い川の左右に専用レーンが设けられ,そこを黄色い小型のバスが走行する。外侧の车线は例によって大渋滞。しかし叠搁罢の専用レーンに割り込むような车両はいない。マナーの良さに感心した。

地下鉄惭搁罢ブルーラインのホームは渋滞を避けたい客であふれている

シーロム交差点にかかるラマ4世通りの「日タイ桥」。その上を交差して叠罢厂シーロム线が走る

シーロム地区の叠搁罢。大渋滞をしり目にオフィス街をさっそうと行く
究极の渋滞回避策
一方,古くからの水运ものぞいてみよう。チョンノンシー駅から再びシーロム线に乗り,チャオプラヤー川を渡る手前のサパーンタクシン駅で降りる。ここはバンコクの中でも下町情绪あふれる地域で,歩道や路地には屋台が连なり,地元の买い物客が群がる。惯れない観光客は前に进むのさえたいへんだ。
駅前には赤いピックアップトラックが并ぶ。これはソンテウと呼ばれる乗合タクシーで,荷台には客が并んで座っている。反対侧にはスクーターを使ったモーターサイと呼ばれるタクシーが客待ちをしていた。帰宅时间帯ということもあったが,バスのない地域に向けた交通手段として重宝されているようだった。
人やのりものの混雑を抜けるとようやくチャオプラヤー川左岸の船着场に到着する。川にはさまざまな船が浮かんでいた。ナイトクルーズへと向かう情绪豊かな観光船の间から,细い船体の水上バスがやってきて,地元住民らしい客を乗せると,上流に向かっていった。水上交通もバンコクの贵重な足である。

ソンテウと呼ばれる赤いピックアップトラックの乗合タクシー
慢性的な渋滞の中で,いかにして移动するか。そのためにバンコクは水の上を含めた多彩な交通手段を駆使している。それがバンコクらしい热気と喧騒を生み出す源泉のひとつになっていた。

ボートは川沿いに観光名所が集まるバンコクにうってつけの交通手段。観光船やクルーズ船で目的地に乗り込めば赘沢でゆったりとした时间が楽しめる。一方,特急から钝行まで种类や路线が豊富な水上バスは地元住民にはなくてはならない移动手段

スワンナプーム国际空港とバンコク中心部は都市高速鉄道のエアポートレールリンクが结ぶ。観光の目玉,王宫とワット?プラケオ(エメラルド寺院),ワット?ポー(涅槃仏寺院),ワット?アルン(暁の寺)の叁大寺院へは,水上バスが便利。チャオプラヤー川左岸の船着场へは叠罢厂シーロム线サパーンタクシン駅から行くことができる
森口将之(もりぐち?まさゆき)
モビリティ?ジャーナリスト,モーター?ジャーナリスト。1962年東京都出身。早稲田大学卒業後,1993年まで自動車雑誌編集部に勤務。フランス車を専門としていたが,パリ市が环境政策を打ち出したのをきっかけに,2000年前後から交通,环境,地域社会,デザインを中心に評論活動を展開。現在は世界の各都市をめぐりながら,公共交通のかたちについて取材に取り組んでいる。著書に『パリ流 环境社会への挑戦』(小欧视频出版会,2009年)など。




